人魚とは、海中に住むと信じられた半人半魚の生物のこと。上半身が人間、下半身が魚という姿とされ、女の人魚をマーメイド、男の人魚をマーマンと呼ぶ。
マーメイドは、海上の岩場に腰をかけ、手に櫛と鏡をもって髪を梳かす、上半身裸の美しい女性として表現される。この姿はアンデルセンの『人魚姫』に登場する人魚の娘などに繋がっていくものである。中世には男を誘惑する魔物のような存在とも考えられるようになり、よく酒場の看板に客引きの為に描かれるなどした。
またマーマンは、上半身が男性、下半身がマーメイド同様に魚の尾となっている。オアンネスやトリトン、ポセイドンといった海神たちはこのタイプである。
中世のキリスト教徒は、人魚は人間のような信仰や倫理を持たないと考えていた。中世から近世にかけて、浜辺に打ち上げられた人魚を見つけたら、キリスト教徒でないことを確かめ、十字架への祈りの仕方を教え、海中で布教せよと言って海へ帰した、という。
また、人魚が人間(と対等の存在)になるためには、地上の人間と結婚し、魂を譲り受けることが一つの方法と考えられた。
これらキリスト教の人魚観は、フケーの『ウンディーネ』やアンデルセンの『人魚姫』などにも影響を与えている。
|