1.平和な世にのみ現れる聖獣
2.黄帝が出会った白澤
3.日光東照宮の白澤
白沢とも書く。中国より伝わる、深山にすむとされる聖獣。麒麟などと同じく四つ足だが、頭上には一対の角、下顎にはヤギにも似た髭を持ち、さらに体のあちこちに合計九つもの目があるという。
『和漢三才図会』によれば、白澤は江西省の東望山にすみ、言語をあやつるという。そして、王が有徳でその徳が明照幽遠なときに姿を現すという。
九つもの目を持つというのも、世の中を注意深く見守るという意味合いがあると思われる。
中国の黄帝が崑崙山の東方にある恒山に出掛けたとき、海辺で白沢という獣に出会ったという。白沢は人語を話すうえ非常に聡明で、山林水沢より生まれた鬼怪についても精通しており、どんな質問も即座に答えたという。
すっかり白沢を尊敬した黄帝は、従っていた画家に白沢の姿を描かせたという。黄帝はこの出会いで白沢の同族11,520種を手に入れ、以後あらゆる妖魔、鬼を恐れる必要が無くなったという。
この故事から日本では旅人の身を守る縁起の良い霊獣とされ、旅の安全を願って白沢の図を身に付ける風習が生まれた。
日光東照宮の拝殿内には、狩野探幽の作とされる二枚の霊獣画がある。その絵は拝殿の正面に向かって左右の杉戸に描かれており、右に麒麟、左に白澤となっている。
この日光東照宮の白澤は、何故か昭和27年頃から”獏(ばく)”であると誤り伝えられていたが、昭和62年に東照宮側が白澤であると正し、現在に至っている。