北大西洋には、空は飛べないが海を上手に泳ぐことの出来る鳥が生息していた。オオウミガラスというその鳥は、太った体で陸をヨチヨチと歩き、人間を恐れることが無かったという。
古くからニューファンドランド沖にまで出漁していたブリタニア人は、このオオウミガラスを「ペン・グウィン pen-gwyn」と呼んでいた。これは「白い頭」という意味の古代ケルト語で、オオウミガラスの頭部に見られる白い斑点のことを指していたという。
しかし学名が付けられる段になると「ペンギン penguinus」というラテン語があてられた。これは「太った鳥」という意味であり、学者にとっては頭の斑点よりも太った体のほうが印象的だったのだろう。
オオウミガラスのしばらく後に、よく似た鳥が南半球でも発見され、それもペンギンと呼ばれるようになった。現在我々が水族館などで見ることが出来るペンギンのことである。対して元祖ペンギンともいえるオオウミガラスは乱獲により絶滅し、もはや我々が生きた姿を見ることは無い。
|