現在我々の知る天狗とは、白髪に赤い顔、高い鼻、山伏のいでたちで羽団扇を持ち、空も飛べるなど不思議な力を持つ妖怪である。
もともと天狗とは中国で流星の一種を意味していた。日本では『日本書紀』に登場するのが最古とされるが、そこでも中国の『史記』や『五雑爼』の説に倣い、流星の一種となっている。ただし、読み方は「あまつきつね」または「あまつととね」である。
これらがなぜ今日の天狗の姿になったかははっきりしない。『松尾筆記』によれば、日本にはもともと天神の意味で「天の君(あめのきみ)」と呼ばれる霊獣がいたという。それが後に「天公(てんぐ)」と記されるようになり、さらに中国の天狗と混同されて次第に今の天狗像が形作られたのだという。
中国でも天狗の捉え方はいろいろあったらしく、女の悪霊としたり、首の白いタヌキに似た動物(『山海経』)、あるいは蜀地方でのアナグマの呼び名(『本草綱目』)などとするものがが見受けられる。
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