大きなハマグリのことも蜃の字で指すが、龍の一種である蛟(みずち)の中にも蜃と呼ばれるものがいる。
『本草綱目』によれば、大きくヘビに似た体で、龍のような角を持ち、ヒレは赤く、腰から下のウロコが全て逆立っているという。また、ツバメの子が好物とされる。
雨が降りそうになると気を吐いて、そこに楼台や城郭などの風景を出現させるといわれ、これを俗に「蜃気楼」、「海市」などと呼ぶ。また、蜃の脂を用いたロウソクでは、煙の中にも楼閣が現れるとされた。
『五雑組』では、はじめ蛟や蜃は山中の穴に隠れ棲み、歳を経ると風雨を呼んで龍となり、海に入るとされている。このような考えから、急に暴風雨がおこるのは蛟が出てきたからだとする地方もあったという。
『本草綱目』の著者の李時珍は、蛟と蜃は同じものであり、蛟という生物が変化して蜃となり、現象を起こすのだと述べている。
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