もともと「鬼」とは中国で死者の頭を指す字として生まれ、転じて死体・霊魂・亡霊を意味するようになった。
しかし、これが日本に入ってくると「おに」と読まれ、意味するところも変ってきた。
「おに」は、隠(おん)という語からでたもので、隠れている、という意味。つまり現世から「お隠れになった」死者のことでもあるが、日本ではそればかりが「おに」ではなく、亡霊はもとより、中央政権から外れて隠れた反乱民や土着民、山中で暮らす人びと、外国人、「たたら師」(土中の鉄を掘りだし鍛える職人)などの鉱山の民までも、「おに」のなかにとらえてしまった。
むしろ日本の鬼は、死者や亡霊よりも、人里離れて暮らす鍛治師や鉄や銅を掘る人などのイメージが色濃く反映していると思えるのである。
その証拠に、日本で古代にイメージされた鬼は、地獄図などで見るように、鉄棒やノコギリや鉄床をもち、刀を鍛え建物をつくるのと同じような方法で、地獄に落ちた人間を拷問にかけている。
また、赤や青といった鬼の体色は、漂着して山中などに隠れ住んだ外国人の肌色からきているという説のほか、赤が鉄、青が銅、などと金属を象徴しているとする説もある。
そして鬼が退治されるということは、金属が鍛えられて人間に有用な道具に生まれかわるプロセスを示している、ともいわれる。
日本の古い鬼には一つ目という特徴があった。世界各地の神話や伝説にも一つ目の神や怪物が登場するが、キュクロペスのように鍛冶や金属、火に関連するものも多い。
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