HOMEへ
絶滅動物
絶滅を考える
絶滅した動物たち
常々草
混沌事典
蔵書寸評
リンク集
掲示板
アンケート
サイト内検索
HELP
一つ上に戻る

ヒースヘン

【HEATH HEN】

◆殺され続けた鳥

北アメリカに新教徒らが上陸したとき、ヒースヘンはよく見かけられるありふれた鳥だった。当初は彼らの食料とされていたが、肉に癖があったので、次第にあまり食べられなくなった。

しかし食用とは別に、狩猟それ自体の楽しみのため、その後もヒースヘンは大量に捕獲され続けた。繁殖期に卵を抱き始めると逃げないというヒースヘンの習性が、捕獲をいっそう容易なものにしていたのである。親と卵が同時に狙われた結果、個体数は急激に減っていった。

また森を伐採しての農地化が進んで、巣作りの場所が減少していったほか、イヌやネコの登場で卵やヒナが襲われるようになるなど、環境の変化も大きなものだった。

◆絶滅の危機に

ヒースヘンの生息数が目に見えて減少したため、ようやく保護の動きが起こり、1791年にニューヨーク州は繁殖期の狩猟を禁止する法律を成立させた。しかしこの法律の効果は全く無く、1870年までにニューヨーク州のヒースヘンは全滅してしまった。

この頃になると、マサチューセッツ州の沖合いの島マーサズ・ビンヤードがほとんど唯一の生息地といっていい状況になってしまっていた。にもかかわらず、当時の鳥学の権威は「ヒースヘンは絶滅の危機にない」との判断結果を発表している。1897年のことである。

◆やっとの保護対策

このマーサズ・ビンヤード島は保護区に指定されたものの、ヒースヘンの個体数は少しずつ減り続け、1907年の調査では77羽にまで減っていた。

するとようやく、保護の重要性に気付いた人々によって募金活動が巻き起こった。これを受けて保護対策は強化され、営巣地の監視も行われた。おかげで1916年には、個体数は2000羽にまで回復した。

◆大自然には勝てず

ここのまま順調にいけばヒースヘンは絶滅を免れたかもしれなかったが、1916年に島で火災が発生したのをきっかけに、再び急激に数を減らしていった。

まずこの森林火災によって、生息数は一気に105羽となってしまった。しかも繁殖期に当たったために、巣から動こうとしない母鳥の多くが焼け死に、生き残りの大部分はオスであった。

もちろん、それでも生まれるヒナはいたが、運悪く同年の冬は異常低温になり、また多くのヒースヘンが死んでしまった。さらにその後も疫病が流行するなどして、ついに最後の1羽が死ぬまでに至った。

1932年3月11日。これがヒースヘン絶滅の日となった。


ヒースヘン

《分類》

  • キジ目キジ科ソウゲンライチョウ類。

《形態》

  • 全長約40cmで、羽毛は淡褐色の地に暗褐色のまだらが縞状に並んでいる。頭の両脇にはオレンジ色の気嚢(きのう)があり、その上部に角のように羽冠が生えている。

《生態》

  • 北アメリカ中央部の大草原に広く分布。森林(おもに樫の木)があるところに好んで暮らした。
  • 主にどんぐりやベリー類などを食べたが、ときに草原へ出て草やその実を食べたりもした。
  • 巣作りは樫の木の根元で行われ、地面にくぼみを作ったのち、葉っぱや草で縁取った。卵は褐色の地に濃褐色の斑点があり、一度に10個ほど生んだ。
  • 繁殖期になりいったん卵を抱くと、人間が近づいても逃げなかった。