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ア・バオ・ア・クゥー

1.『勝利の塔』を登る者

2.螺旋階段は涅槃(ねはん)に通ず

3.ア・バオ・ア・クゥーは再び眠る

1.『勝利の塔』を登る者

ア・バオ・ア・クゥーとはインドに伝わる伝説の生き物のことで、ラジャスターン州ウダイプル郡チトールにあるジャイナ教の建物『勝利の塔』に棲むという。

普段は『勝利の塔』にある螺旋階段の一段目で眠っているが、誰かが塔のてっぺんを目指して螺旋階段を登りはじめるとそれに反応して目を覚まし、その人間の後について階段を登りはじめるといわれている。

ア・バオ・ア・クゥーの姿形はよくわからないが、普段の皮膚は半透明に近く、その感触は桃の皮のようだともいわれる。また、からだ全体でものを見ることが出来るともいわれている。


2.螺旋階段は涅槃(ねはん)に通ず

この『勝利の塔』の螺旋階段を最上段まで登りきることが出来た人間は涅槃(ねはん)に達するといわれ、階段を登る者が涅槃(ねはん)に近づくたびに、ア・バオ・ア・クゥーの姿は色を増し、形が次第にはっきりし、青味がかった光を帯びはじめるという。

そして最上階に到達したア・バオ・ア・クゥーは遂にその究極の姿を現すという。


3.ア・バオ・ア・クゥーは再び眠る

もし、この螺旋階段を登る者が最上段まで達することが出来なかったなら、ア・バオ・ア・クゥーは途端にもがき苦しみだし、その姿は不完全となり、輝きは衰える。その際の呻き声はしかし、絹の擦れる音に似てほとんど聞こえないという。

そして人間が階段を降りだすやいなや、ア・バオ・ア・クゥーは最初の段へ転げ落ちるように倒れ、疲れ果ててほとんど形のなくなった体のまま、塔を登る者が再び現れるのを待つという。

生まれてより幾世紀、ア・バオ・ア・クゥーが塔の最上階のテラスに到達したのはただ一度しかない、という。