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ジャージー・デビル

1.ジャージーの悪魔

2.数通りの出生譚

3.伝説と事実と

1909年当時のスケッチ

1.ジャージーの悪魔

アメリカはニュージャージー一帯に古くから伝わる怪物。パインズ(正式名パインランズ)の森に棲み、何年か(7年とも)おきに姿を現しては人々を恐怖に陥れるという。

この怪物は人間の子供が姿を変えたものだと伝えられ、「リーズポイントの悪魔」「リーズ家の悪魔」などとも呼ばれている。

ジャージー・デビルの出現時には、イヌが吠える、フクロウが鳴くといった予兆がみられるという。またジャージー・デビルが沼の上空を飛べば、吐く息によって腐敗した大量の魚が水面に浮かび上がる、ともいわれる。ある地域では「リーズ家の悪魔」に触れられると知恵遅れの子供が生まれる、と伝えられたという。

この怪物の興味深い点は、伝説の生物でありながら、実際に目撃報告が現代まで続いている点である。

1800年初頭には、パインズの森での狩猟を好んだスペインの前国王も、この怪物に一度出会ったと伝えられている。また、1800年代のはじめにパインズを訪れていた海軍のデケイター准将も怪物に遭遇し、一発の砲弾を見舞ったという。しかし怪物はその砲弾が命中したにもかかわらず、ものともせず飛び去ったと伝えられている。この他、1909年に起きた集中目撃事件もたいへんな騒動になったという。

2.数通りの出生譚

この怪物の出生に関しては、細部が異なる説が複数伝えられている。そのうちの幾つかは以下のようなものである。


【バーリントンのリーズ家の子】
植民地時代中期、デラウェア川沿岸の町バーリントンに黒魔術を使う婦人がいた。「リーズ家の母」といわれるこの婦人は、1735年の嵐の日、父親の知れぬ一人の男児を産み落とした。普通の姿で生まれたその子はすぐに変貌し始め、嵐の夜が明けぬうちに、胴体はヘビ、足はひづめ、頭はウマ、コウモリのような翼、ドラゴンを思わせる二股の尾、茶褐色の肌という恐ろしい姿になった。そして母とその枕許に集っていた老婦人らを薙ぎ払い、叫び声を上げ、煙突から飛び去っていった。そして、この子の父親は「汚れた悪霊」「暗黒の長」「角の悪魔」「悪魔の首領」などと呼ばれた人物だったに違いないと噂された。

リーズポイントのシュラウズ家の子】
リーズポイントに住むシュラウズ家は子だくさんで、夫人は「このうえさらに子供が増えるなら、いっそ悪魔であればいい」と願った。すると実際に出来そこないのような小さな子が生まれた。その子は育ちも遅く、家の中を不自由に動き回っていたが、ある嵐の晩、長い腕を羽ばたくように動かしていたかと思うと、叫び声と共に腕を翼に変え、煙突から飛び去っていった。

【エステルヴィルのリーズ家の子
エステルヴィルに暮らすリーズ家の夫人に子供が生まれた。その子は生まれたときは正常だったが、まもなく得体の知れぬ生き物へと変貌し、数日後に窓から空へと飛び去っていった。その後、その子は毎日家に戻ってきては、しばらく塀の上にとまっていたという。

3.伝説と事実と

伝説中のキーワード「リーズ家」「シュラウズ家」「リーズポイント」「1735年」との関連が感じられる幾つかの歴史的事実が、調査によって判明しているという。

リーズを名乗る人々がこの地方に住むようになったのは1694年のことで、リーズポイントにダニエル・リーズとその一族が住んだのが始まりだという。

またナイトの称号を持つサミュエル・シュラウズらシュラウズ一族が、リトル・エッグ・ハーバーの町(リーズポイントの近く)にやって来て暮らし始めたのが1735年のことだそうである。

しかし、これら実在する地域や人物が、伝説とどういった関係にあるのかははっきりしない。もちろんただの偶然という可能性もあるし、何らかの歴史的事実が伝説に関わっている可能性もあろう。